栄養学講座
治療家のための漢方薬講座

インタビュー

インタビュー

セルフメディケーションに貢献している治療家たち

Q1. 登録販売者の資格取得で苦労したことは何ですか?

実務経験を積もうと思い、薬店で雇ってもらおうとしたら「ダメダメ!」って断られました。

 私が登録販売者の実務経験を積もうと考えて薬店にとにかく雇ってくれと頼んだのですが、そこの薬剤師さんに「ダメダメ!」って言われたんです。私は鍼灸師や看護師、保健師などの資格を持っているのですが、その薬剤師の人に「それだけ色々な資格があればこんな資格いらないじゃない。ましてや資格を取るためだけに雇うなんてダメ!」と言われたんです。私はこの資格に非常に魅力を感じていて、漢方薬をはじめとした一般薬の取り扱いがどうしてもしたかったんです。 でも、そういったことで中々実務を積むことが出来なかったのを覚えていますね。

石井先生

Q2. 治療家は登録販売者を活用する最大の利点とはなんでしょうか?

「やっぱり毎日来院するのは難しい。その間に漢方薬で補ってもらえるのは利点ですね。」

漢方薬を扱いたい思いは治療家にはあります。鍼灸の手技だけでも毎日治療に来てもらえたらどんどん良くなっていくのは分かるんですけど、でも毎日来院してもらうのは難しいですよね。その来院できない間に漢方薬で補えたらいいですよね。鍼灸は手技で五臓六腑という東洋思想の発想で、そこを目掛けてやるので、ただ外をほぐしたりするだけではないんです。そこから気をためて調子が上がっていきます。漢方薬は家などで手軽にそういった五臓六腑へのケアが出来るのが利点ですね。

鍼灸院には忙しい時間を割いて来てもらわないといけないけど、そういった忙しくて中々来れないお客さんは日常に戻ってしばらくしたら、せっかく施した手技の効果も次に来院したら元の状態に戻ってしまっています。人間は生まれてから、呼吸や食事などでエネルギーを蓄えながら成長しているわけですけども、大人になればなるほどそのエネルギーを使うばかりになってしまい、「虚」の状態(エネルギーが抜けていく状態)になっていきます。

そのエネルギーを補うのに一回の手技では無理ですよね。元の生活に戻ってしまうのでその間でも漢方薬でエネルギーを補ってほしいんです。日常生活でも漢方薬などで体のベースを上げてもらえば、次に来院したときに脈が弱かった人が正常に維持できていたりするので、治療する側としても次のステップに行けるわけです。

そういった日常でも出来るケアをしていかないと、次に来院してもまた同じ様な症状に戻ってしまうとなるとあまり意味がないですよね。今の人たちはどうしても仕事が忙しかったり、出張が多かったり、夜更かししたりする人が多いので、そういった意味でもせめて日常は漢方薬などで補ってほしいですね。漢方薬が取り扱えると治療家も安心して「また来てくださいね。」と言えると思います。症状からみて次の週にもう一回来てほしいお客さんにも無理して来れない場合でも、「せめてこの漢方薬だけは飲んでおいて。」と言えるわけです。

登録販売者のいいところはやっぱり漢方薬が取り扱えることですね。今まではお客さんにこういう漢方薬がいいんじゃないですかと言って、近くの漢方薬店などに行ってもらっていたんですが、思った通りの漢方薬を出してもらえないケースが多いです。「この漢方薬出してきたか...。」とか。虚の状態の人に虚を促すような漢方薬を勧められてたりするんです。漢方薬を出す先生はそのお客さんの症状は直接みれないわけですから当然ですよね。

治療家の場合、その場でお客さんにピッタリの漢方薬を勧めることが出来るのは大きいですね。お客さんとの信頼関係もどんどん出来ていきますし、何かあったらとりあえず来て聞いてもらえるようになるし、それをきっかけにだんだん東洋医学の思想とかを知ってもらえればいいな、と思うんです。西洋医学の思想が一辺倒な世の中になってしまっているので。ここで地道にそういう活動をしていますけれどもやっぱり西洋医学の力は強いです。東洋医学は「そんなの本当?」と思う方も多いです。もっと色んな価値観があったら面白い、選択肢が広がりますよね。東洋医学も面白いんですよ。


Q3. 統合医療のような東洋医学と西洋医学の融合は難しいのでしょうか。

「どうしてもデータ理論的な西洋医学が優勢になってしまうんです。」

統合医療などは一時期流行りましたね。私も最初はそういうものを目指していました。昔は病院の東洋科という混合診療に携わっていましたが、医療制度が変わって混合診療が駄目になりうまく行きませんでした。また、ホリスティック医療といっても窓口を別々にしないといけないので規模が大きくなければ難しいですし、そういう時にはすごい制限があったりと中々弊害が多いんですよね。

私が以前勤めていた北里大学病院も北里大学北里研究所と東洋医学総合研究所と並列になっているんですけど、中々それらが融合していくのは難しいですね。何故かというと、やっぱり西洋のお医者さんがとにかく強くて上に立つ人は西洋の人なんです。科学的思想を述べられる人の方が上に立てる構造なんです。なので段々東洋側の先生は小っちゃくなってしまうんです。それが現状なんです。東洋と西洋の融合は同じ病院、敷地内にあっても難しいなと思います。西洋は「この処置が駄目なら東 洋に。」という考えの人は圧倒的に少ないですね。西洋医学でも漢方薬の勉強もするようにはなりましたが、どうしても西洋的観点から見てしまっています。お互いの連携としても患者さんは運動器疾患でなければ東洋の方にまわしても意味がないだろうという先生ばかりなんです。本当は鍼灸の人たちは五臓六腑が得意なのに、来る患者さんは運動器疾患の患者さんばかりなんです。

こういった体質は日本の医療制度を変えないと難しいです。あとお医者さん自身の価値観が変わってもらわないと。今は体制としてピラミッド型で西洋のお医者さんが 医療界のトップなので。みんなで啓もう活動をやってなどと思っていますが、今はCMを見ても「何かあったらお医者さんに行きましょう。」とか宣伝しているので、ここまでメディアで言われると厳しいものがありますけど、私たちがやれることは東洋医学の思想を地道に一人ひとりに声をかけていくことしかないんじゃないでしょうか。その輪を広げることですかね。

西洋はデータで見せることが出来るので納得しやすいんです。人の頭で考えやすい。東洋医学は体で教えるから、良くなったというデータがすぐには出てこないので、 本人の自覚。膝とかも本当は手術しなければいけないような状態から地道に治療していくので気が付いたら「あれ?まがってる!!」みたいなことがあるんです。


Q3. 先生の目指す治療家像を教えてください。

「私はそこに「愛情」があれば治療方法は西洋でも東洋でもいいと思っています。」

「自分自身が受けたいな」という治療を目指してます。とにかくそこに「愛情」があればいいかなと。治療方法して西洋でも東洋でもいいと思ってます。方法はなんでもいいと私は思っています。一緒に元気になれるのが私の治療のモットーですかね。親身になってくれる先生ってうれしいですよね。西洋医学はアニュアル化しすぎて本当に大切なことが抜けている気がする。マニュアル通りの型にはまった病院に入院しても患者さんはあまりいい気はしないですよね。お薬だけではなくてもっと人間的に接してもらえて病気になった時に人の優しさが感じられる。そういったことで良くなっていく思うんです。数値だけ良くなっていても「自分としてはここが痛いのに。」とか、そういったこともあるわけです。

北里の先生でも同じお薬を出しているのに。Aの先生が処方したのとBの先生が処方したのとでは効き目が違かったりするんですね。診る先生によって違うんです。 医学の教育の部分でもマニュアルから外れる子はダメな子。というレッテルを張られます。みんながそのマニュアルにはめようとするし、はまると安心。という風に落ち着いているんですね。そこを東洋思想で捉えていくとすごく面白い。ツボは取穴をすることはすごい大事なんですけど、そこで私たち治療家がどうやったらその人のエネルギーを回していくのか、その人の体がどうなっているのかを想像したりしてやってみます。

そうすると、みんな同じ取穴をしてもそれぞれ手技をする先生によって違う効果になるんです。北里とかに居た時もそうですし、テストにも出てきますけど、ツボが何センチなのか何ミリなのかってそういうの国際定義するんです。でも、それも大事ですけど人それぞれカラダを触ってみて「ココ!」ってところがツボなんですよ。体のすべてにツボでありエネルギー体ですから。私が教わった鍼灸の先生はまず「愛情だ!!」って(笑)いい先生に出会えてよかったなと思います。昔の鍼灸学校は国家資格の訓練校みたいなものだったんです。開業できるようにしっかり3年間育つようなカリキュラムが組み込まれてました。臨床実習とかも学校でしっかり習いました。今はそういったことは基本的にはやらなくてもいいんですね。学校がこれだけ増えちゃうと卒業した臨床経験のない人がそのまま先生になっちゃうんです。針を打てても療法を知らないというのでしょうか。怖いですよね。そういった治療家にはならないで欲しいですね。


阪口先生 宮崎先生